好かれないものほど愛おしい
魅了:人の心をすっかりひきつけてしまうこと。夢中にさせてしまうこと。
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12月
ファミチキさんとごろーさんが味噌からUに来ていた12月の終わりの頃。遠征者を歓迎した後、街を散策する。
スト師にとって冬というのはとんでもない大敵らしい。その寒さに耐えきれずそっと活動を終えていく人が多いと聞く。
銀は冬ストは嫌いではない。「寒い日は自分の輪郭がはっきりと感じられて、世界と自分の境目をよく理解できる」的なことを書いていたのは桜庭一樹だっただろうか。
ナンパをしていると社会性を剥ぎ取られて、自分という生身の人間で戦うことを余儀なくされる。冬ストは世界と対峙する自分という、ナンパの一側面を凝縮したような季節だと思う。
個人的にナンパをしていて良かったことの一つは等身大の自分が晒されることだ。同じ会社にいる人であれば、たとえ自分のことを嫌いでも丁寧に会話してくれるだろう。でも急に声をかけてきた人に対して、そんなことをしないといけない謂れはない。気に食わなければ去ればいい。
生身のコミュニケーションという、現代社会では中々に異常な行為で自分の存在意義を確かめる。幸いなことに、一緒にいて楽しいと思ってくれる人も世の中にはいるらしい。ナンパを始める前は自分に自信がなくておどおどしていたところがあったが、今では自分を少しは認めてあげられるようになった。
その日も不安と期待をないまぜにしながら声をかける。
銀「今日めっちゃ寒くない?ちょっとあったかいもの飲もうよ」
この日は自分の中でも珍しく、コンビニ連れ出し。よく笑う子で会話が楽しかったことを覚えている。「今度デートしよう」と約束して解散した。
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2月
LINEのやり取りでアポのお店まで決めたものの、それから連絡が途絶えた。まあストをしているとごく稀によくあることなので気に留めてはいなかった。
1ヶ月後、急に連絡が入る。「LINE温めすぎました笑。ご飯行きましょう」と。
どういう人だったっけ。案件のことを思い出そうと脳内会議が始まる。
脳内駒場「どうも案件のことを忘れてしまったようやねん」
脳内内海「分からへんの?ほな俺が一緒に思い出してあげるからどんな特徴だったのか教えてみてよ」
駒場「声かけてコンビニ連れ出しが割とノーグダで決まってな。結構距離感近くてよく腕もあたってたなぁ。ちなみに看護師らしいで」
内海「おー。即系やないかい。その特徴はもう完全に即系やがな。彼女たちは距離感バグってるんやから。しかも看護師て。すぐ分かったやんこんなんもう」
駒場「即系かー。でも、コンビニ連れ出しより先はかなり渋い感じやったんよなぁ」
内海「あー。ほな即系と違うかぁ。即系じゃない子はどこかの基準で急に固くなるからなぁ。もう一度詳しく教えてもらえる?」
駒場「LINEが死んだと思ったら突然復活してアポいけるようになったねん」
内海「即系やないかい!その特徴は完全に即系なのよ。あれは寂しくなったタイミングで急に連絡してくる生き物なんやから!」
駒場「でも本人曰く、恋愛は高校が最後で、24になる今まで特に何もなかったっていうねん」
内海「ほな即系と違うかぁ。一番遊びたい盛りを何もなく過ごすなんて至難の技なんやから」
うーん、即系っぽい気もするし、割とバリカタな案件な気もする。
結局よくは思い出せなかったけど、もう一度あの笑顔が見てみたいなと思ったのでアポってみることにした。
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当日
待ち合わせ場所に案件が現れる。24歳、銀値5。The普通の女性。顔はどうだろ。強いて。強いて。強いて言えば、ギターできない胸も大きくない山吹りょうになれた世界線も、善行を積めばありえたかもしれないなという感じ。
久しぶりの挨拶を済ませお店に入る。和みを入れながらいつものようにプロファイリングを始める。趣味とか仕事は特に刺さる要素がなかったので、恋愛トークに持っていく。まずはグダ予防トーク。
銀「恋愛の議論でさ、見極めるのはデート3回目理論ってあるやん。あれとかどう思う?」
りょう「まあ必ずしも3回目である必要性はないかなとは思う」
銀「俺もそう。1回目でバチコーンと合う時もあるし、5回でも全然ダメな人はダメやん」
りょう「回数じゃなくてフィーリングとかですよね」
銀「そそ。3回目とか言ってる人は初回のデートで『ご趣味は〜』とかしょうもない会話してると思うんよな。俺ああいう茶番苦手。最初から本気で話しあってたら1回目でも十分相手のことわかるくない?」
りょう「男の人ってそういうのするの苦手じゃないですか?嫌われたくないとか」
銀「そうなん?とりあえず俺はそういうのないわ」
グダ予防に加えて魂トークにドライブするための導火線。会話に火をつけていく。
銀「高校以来特に何もなかったって結構枯れてない?」
りょう「いや、そんなことはなくて恋愛はしたいんですよ」
銀「理想が高いとか?」
りょう「周りにはそう言われるけど、自分ではしょうもない恋愛してきたなって」
キーワードが来たらオウム返しをして深堀り。SPINトークの鉄則!
銀「しょうもない…?」
りょう「そう、しょうもない。東京に行った時の焼肉屋のお兄さんに一目惚れして連絡先を渡してそれから何もなかったり。バイト先のお客さんにただただうっとりしたり」
銀「分かった。ジャニーズ好きやろ」
りょう「わかります?笑めちゃくちゃジャニオタです」
銀「完全にアイドル的なワーキャー恋愛目指しすぎやもん」
りょう「昔はそうでもなかったんですけど、今は一目惚れとかばっかりで」
ジャニオタで顔しか見てない系か。なかなかに厄介だな。
銀「ちな、俺は?」
りょう「いやー、ど真ん中タイプってことは、まあないよね笑」
はい、なにわの銀のストナンに顔刺しは存在しないことが証明されました。寝たきりです。笑えよ。こんな顔でもストナンしてるんだぜ。
まあでも材料は得られた。ここからがトークの正念場。
銀「24歳やし、そんなワーキャーな恋愛してても仕方なくない?」
りょう「分かってるんですけど、そういう性格だから仕方ないですよね…」
銀「俺思うんやけどさ、ど真ん中タイプじゃなくても付き合うことってあるやん。あれが本当に好きってことやと思う。だってすごくない?タイプじゃないのに好きってもうそれ逆にめっちゃ好きやん」
りょう「確かにそれはあるかも」
銀「だから外角かと思ったらすげぇ変化球がぐいっと曲がって真ん中くることあるかもよ」
タイプじゃない人、逆にタイプ理論。これなんか謎に深く理解されるんよな。いわゆる認知的不協和ってやつなのかもしれないけど、まあでも世界の真理なんじゃないかなとも思う。
りょうの性格や考えを理解した上でトークを展開し続ける。ただ、どうも即ゲージが上がりきっておらず、あともう一押しが足りない。どうも勝ちきらなさそう。ここで最後の巻き直しを図る。
銀「俺ど真ん中じゃないんやろ」
りょう「そうですねー。嘘言っても仕方ないし」
銀「じゃあ今日なんで来てくれたん?」
りょう「えー、うん。気分…?」
表情を見るとちょっと照れ臭そうにしている。全くもって好意がないわけじゃない。でも食いつきが上がっているわけでもないという膠着状態。時間だけがいたずらに過ぎていく。
勢いが下がらないところで居酒屋を出る。ハンドテスト。「付き合ってからじゃないと手を繋がない」グダ。やっぱりゲージが溜まっていない。二次会打診は通ったので和み直し。
銀「どういう展開やったらりょうちゃんって落ちるんやろ」
第三者視点に立って、相手の落とし方を考える。話聞いたら部長もよくやっているらしい。結構使える。
りょう「やっぱりめちゃタイプの顔でズバーンかとんでもない変化球とか投げてこないと難しいんじゃないですかね」
銀「そんな変化球今まであった?」
りょう「ないですねー。だから今まで何もなくて…」
銀「同世代にそれ求めるの酷やろ。そもそも草食化してるのに」
りょう「確かに。私から話題振らなきゃダメだったり。その点銀さんは話振ってくれますよね」
銀「やろ?1回目のデートに割に結構りょうちゃんのこと知ってるとおm…」
銀「あっ」
りょう「どうしたんですか」
銀「いやさ、俺りょうのこと気になってるからめっちゃ知りたくて」
りょう「え、ありがとうございます」
銀「だからりょうのことについて色々話題振って話して」
りょう「別にいいことじゃないですか?『あっ』て何?」
銀「自分のことはあんまり話してないなって。いや少しはしてるけどさ。どういうことにワクワクして、どういうことに目を輝かせるかとか」
りょう「確かに」
銀「ありがとう!りょうと話したおかげで自分のことがちょっと分かったわ!本当ありがとう!!」
りょう「え?あ?うん。どうも笑」
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振り返り
これはこの前のアポ負けだが、他にももう一件同じタイミングで同じような負け方をした。好意はあるが食いつきを上げきれず和みの段階で負けてしまった勝負。
※ちなみに下記のブログの人の再アポ。マジで勝ちたかった…
二つとも和みフェーズ2での負け。
界隈で言われている打診、ルーティン、グダ崩し等は相手がある程度仕上がっている口説き段階の状況でやって初めて効果があるものである。(ちなみにチン出しは即と口説きの間で最も威力が出るアクション)
和み2、食いつき上げフェーズが言語化・理論化されていることって少ない気がする。
①和み2のところはトークでなく顔で相手を仕上げ、異性フォルダに持っていくのが王道の手法だから
→なので界隈で語れる人が少ない。そして銀には使いづらい…。
②流布すると陳腐化してしまう
→「月が綺麗ですね」(まあこれも口説きフェーズのフレーズだが)は初見にのみ通用する手法である。「ナンパを義務教育で教えるべき」とかいうクソツイートも目にするが、それが世に広まれば闇に対する防衛術で撃退される。
③このフェーズを言語化できる人、そしてそれを再現性のあるやり方で提示できる人が少ない
→あまりにも複雑すぎる過程であり、拡散しすぎて取り留めがない。そしてそれぞれの武器が違うので再現性が低い。
和み2から口説き段階にまで持っていくには、食いつき上げが必要である。今まで銀は、承認欲求を満たすという手法で戦ってきた。
ありがたいことに、「どうしてエモい即とか生まれるんですか」と聞いていただけることがある。自分の答えは、「顔で刺さらないから、エモい体験を提供できて初めて体を許してくれるから」だと思っている。相手を理解して、相手が求めるシチュエーションに持っていく。もしこのブログを読んでエモいと感じていただけたのであれば、それは銀が女性たちのエモ体験の一部に混ぜてもらえたからだと思う。
この戦い方は間違っていないと思うし変えるつもりもない。正直一つの到達点だとすら思っている。ただ、承認欲求を満たすだけでは落とせない相手もいる。
最近見つけた動画の中で一つの突破口だと感じたものがあった。社美緒さんのYouTube動画。
「自分に関心がない女の子のアプローチ」のパート。「好きな動画(刺さってる顔)はどんなサムネでも見る。でも興味のない動画(タイプじゃない人)でも釣り動画みたいな、え?なに?ってなるやつやったら見るじゃん。まずなんでもいいから相手に自分というものを印象づけること。これが重要」
相手の潜在意識に入り込む方法として美緒さんはあたおかムーブを推奨しているが、構造が同じであれば別にそれである必要はないと思う。相手が自分のことを男として気になる「何か」で魅了して、こっちのフィールドに持ってくること。
でもこれが考えても考えてもなかなか出てこない。他の人になくて自分にしかない魅力。しかもフックになるようなレベルのもの。
正直、これまで自分とは何者か、という問いから避けてきた。アカデミックの道に残らなかったのもそうだ。自分とは何者か、という問いに答えられなかったから。でも逃げても逃げても、ブレイクスルーしようと思うとどこかでそこにぶつかってしまうらしい。
本当はこういう案件はスクリーニングを丁寧にかけて損切りする相手なのかもしれない。
ローラーで「楽勝」ゾーンの女性を引っ掛けて、時には「楽勝」に近い「接戦」を即る。これがやるべきゲーム展開。
でも、と思う。自分が憧れるPUAの姿は、相手が自分に関心がなさそうにも関わらず、人間としての魅力で仕上げきってしまうような人。この領域になるまで諦めたくない。
実はナンパは3月にやめようと思っていた。元々大阪赴任は2年だけで、その期間色々遊んでみるかーという予定だったから。でも色々あってもう1年だけ大阪にいることになった。あともう少しだけ足掻いて見つけてみようと思う。
君じゃなきゃいけない理由。そして、自分じゃなきゃいけない理由。
終